規模を超えて:欧州のインフラのエンジンルーム(動力源)を再考する
経済インフラ・プロジェクトにおいて規模は重要なのでしょうか
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所要時間: 2 分
日付: 2026年2月25日
私たちは10年以上にわたり、エネルギー、運輸、デジタルインフラに約30億ユーロを投資してきましたが、この経験は常に同じ結論を示しています。それは、政策目標、事業運営、投資家リターンが最も高い次元で整合するのは、中小型マーケットであるということです。この市場では仲介者の必要性が低く、競争もはるかに限定的です。そのため、単なる財務テクニックでリターンを押し上げるのではなく、真の価値創造を実現する余地があるのです。
これは、より大きなリスクを取るということではなく、資産により近い場所で実務に携わり、地域のステークホルダーと密接な関係を築き、欧州の経済や脱炭素目標が実際に達成されるか否かを左右する意思決定に深く関与する、ということです。
政策の追い風と競争優位性
欧州連合(EU)による最近の電力市場の制度設計、許認可手続きの迅速化、ネットゼロ産業法(NZIA)は、変化に素早く対応し、地域の政策上の優先事項に沿うことができる資産に有利な状況をもたらしました。この点で、中小型プラットフォームは構造的な優位性を持ちます。具体的には、自治体と建設的な協力関係を築いている公益事業、国や地域の戦略に組み込まれた運輸資産、補助金制度や供給の安全性に関する優先順位の変化にビジネスモデルを適応させられるエネルギー・プラットフォームなどがこれに当たります。大規模な中央集約型の資産は、こうしたペースでの対応が難しいことが少なくありません。
欧州の競争力に関するドラギ報告書や、現在進行中の欧州の資本コストを巡る議論は、入札に伴う価格プレミアムを回避し、より適切なタイミングで実行できる、相対でのプライマリー取引の重要性を浮き彫りにしています。相対取引のこのような特性は、マルチプルの拡大ではなく、運営上の意思決定を通じて価値が創造される傾向が強まっている現在の環境において極めて重要です。
リスク、価値、証左
「小規模な資産はリスクが高い」という考えは、詳しく検証してみると、決して妥当なものではありません。規制対象セクターにおいては、リスクを主に決定づけるのは、資産の規模よりも、規制枠組みの安定性やガバナンスの質です。例えば、フィンランドにおける私たちの投資先である公益事業は、大手競合他社と同じ規制体制の下で運営されていますが、より保守的な資本構成と、ハンズオン型の資産管理・運用の余地が大きいことから恩恵を受けています。
こうしたガバナンスと資本規律の違いは、具体的な成果となって現れ、その成果は、短期的なリターンと長期的なサステナビティ主導のレジリエンス(強靭性)の両方を捉える財務KPI(重要業績評価指標)を通じて測定可能です。2024年には、私たちの保有するエネルギー資産は約900GWh[1]の再生可能エネルギー電力を生成し、27万4,000トンのCO2換算排出量[2]を削減しました。同年に、地域暖房プラットフォームは8万8,000以上のお客様に1.4TWh[3]の安定した低炭素熱を供給し、配電資産は北欧の厳しい冬の間も供給の安全性を支えました。また、保有する車両は英国のネットワーク内で有数の高い運行信頼性を実現しました。
アジリティ(機動力)、地域に根ざしたソリューション、構造的変革
中小型資産は、大型資産とは異なるスピードで動きます。開発期間はより短く、適応はより迅速で、イノベーションが官僚的な手続きに阻害されることも少なくなります。フィンランドにおいては、こうした特性により、低価格の再生可能電力が得られる時間帯を活用した電気ボイラーの迅速な導入、廃熱回収のためのデータセンターの併設、レジリエンス向上のための地域暖房ネットワークにおける燃料源の多様化が可能になりました。これらの取り組みは、経営陣や地方自治体との緊密な連携を通じて推進され、数年ではなく、わずか数ヵ月で実装されました。
イタリアでも、同様の論理がバイオメタン・プラットフォームの開発を支えており、グリーンフィールド(新規開発)の追求ではなく、既存のバイオガス資産のアップグレーに焦点が当てられています。こうしたアプローチにより、既存インフラの活用による工期短縮や、脱炭素目標と整合的なエネルギ―安全保障や地域農業を可能にしています。
欧州のエネルギー政策が野心的であることは当然と言えますが、脱炭素化やレジリエンスの向上に向けた実際の取り組みは地域レベルで行われます。交通の電化、熱供給の脱炭素化、デジタルインフラの構築は市町村で展開される課題であり、中小型案件への投資家が重要な役割を果たしています。私たちは経営陣、地方自治体、地域社会と直接協力することで、各地域の状況に合わせた、迅速かつ持続可能なソリューションを提供することが可能です。
この戦略では、エッセンシャル・サービス(不可欠なサービス)、高い参入障壁、予測可能なキャッシュフローを優先すると同時に、過半数議決権や共同経営権、長期的なパートナーシップを通じて、事業成果に積極的に影響を与える能力を維持します。また、こうしたアプローチは出口戦略(エグジット)を方向付ける役割も果たします。中小型マーケットで成長し、リスクが低減された資産には、時間の経過とともに自然と、より多様な買い手が現れます。大型インフラファンド、戦略的投資家、長期保有目的の投資家などです。流動性は制約されるのではなく、高まっていくのです。
おわりに
欧州の変化する経済を支えるために必要なインフラは、巨大プロジェクトや象徴的な資産だけで完成されるわけではありません。それは、インフラシステム全体にわたって、地域レベルで下される数千もの意思決定の積み重ねによって構築されるものです。また、政策や競争力のトレンドが変化し続ける中、機動力、確かな実績、地域に関する洞察を兼ね備え、測定可能な成果をもたらすことができるプレーヤーこそが、その姿を形作っていくことなるでしょう。
中小型案件への投資家は、野心的な政策目標と、現場での具体的な実行・成果の橋渡しをする立場におり、欧州の競争力向上と脱炭素化を支援するうえで独自の役割を担っています。
本内容は、原則として機関投資家のお客様への情報提供を目的として作成・公開しています。
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