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Private Credit

プライベート・クレジットの新たな領域:イノベーション、流動性、レジリエンス(耐性)

アバディーン・インベストメンツのMarianne Zangerlが、急速に変化しているプライベート・クレジットの世界について専門的な視点を共有し、このダイナミックな資産クラスを運用する機関投資家に向けて実践的な洞察を提供します。

執筆者
グローバル債券部門 副責任者 兼 ESG責任者(債券担当)
Highland cow

所要時間: 2 分

日付: 2025年10月28日

この記事は、アバディーン・インベストメンツのグローバル債券部門の副責任者であるMarianne Zangerlの最近のインタビューに基づいています。Zangerlは、急速に変化しているプライベート・クレジットの世界について専門的な視点を共有し、このダイナミックな資産クラスを運用する機関投資家に向けて実践的な洞察を示しました。

ダイレクト・レンディングを超えて:新たな可能性を探る

プライベート・クレジットはもはや、ミドル・マーケットのダイレクト・レンディングというお馴染みの領域に限定されていません。このセクターが成熟するのに伴い、投資家は投資適格プライベート・クレジット、動産・債権担保融資(ABL)、船舶ファイナンス、ファンド・ファイナンスといった新たな分野に進出しています。

現在のトレンドを踏まえ、Zangerlは、投資家がプライベート・クレジットの分野でダイレクト・レンディングを超えた機会をますます求めていると指摘しています。こうした拡大は革新的なファンド・ストラクチャーの台頭を伴っており、それにより富裕層や、さらにはリテール投資家にも門戸が開かれています。

「様々なファンド・ストラクチャーによって、より多くの富裕層、さらには個人投資家がプライベート・クレジットにアクセスできるようになっています。私たちは、この傾向が今後数年間で拡大すると予想しています。」

機関投資家にとって、こうした状況が発しているメッセージは明確です。すなわち、プライベート・クレジットのユニバース(投資対象)は拡大しており、それに適応できる投資家こそが、新たな機会を捉え、リスクを管理するうえで最も有利になるということです。

犠牲を伴わない流動性:高ボラティリティ局面に備えた賢明なストラクチャー

流動性は、プライベート・クレジット投資家にとって常に問題となるトレードオフであり、市場の混乱時にその重要性が浮き彫りになります。Zangerlは、資産の強制売却リスクについて率直に述べています。

「アバディーン・インベストメンツは、流動性のためにプライベート・アセットを売却することを回避しようと努めています。投資家は資産の売却を余儀なくされた場合、大幅なディスカウントに直面する可能性があります。私たちは、ファンド・ストラクチャーに流動性を加える他の方法を探します。」

アバディーン・インベストメンツのアプローチには、プライベート・クレジットのビークルにパブリック市場で取引されている債券へのアロケーションを組み入れることなどがあります。そうすることで、ポートフォリオの一部の流動性を維持できます。また、私たちはデュレーションの短い資産に関しては、投資家への資金の払い戻しが緩やかなストラクチャーを採用しています。これは、投資家が大幅なディスカウントを受け入れて資産を売却することなく現金にアクセスすることを可能にします。

レジリエンスの構築:アンダーライティング(審査)、モニタリング、コベナンツの規律

景気サイクルが急速に変化し得る環境においては、融資の厳格な審査と注意深いモニタリングが不可欠です。私たちは、取引を審査する際にはサイクル全体を通じた評価をすることを目指し、融資の焦げ付きを引き起こす可能性がある要因を検討したうえで、そうした結果に対するプロテクションが得られるストラクチャーを構築するようにします。継続的なモニタリングは、オリジネーションと同じくらい重要です。そうした初期の警告サインを見つけることができれば、デフォルトが発生する前に借り手と協力することができます。

コベナンツの緩和は、特に競争の激しい市場や銀行が過度に融資を行っている市場では、引き続き注目の話題となっています。しかし、私たちはノンバンクの貸し手であるため、銀行と同じ圧力にはさらされていません。競争入札においては、厳格な姿勢を維持します。コベナンツが特定の取引にとって機能せず、適切でないのであれば、その取引を決して進めません。

ソーシング、分散、規制への精通:機関投資家の強み

バランスの取れたポートフォリオは、広範なオリジネーション・ファネル(案件発掘の経路)と、プライシング(融資条件)、信用力、コベナンツの強度に関する厳格なフィルタリングから始まります。分散は、私たちがいかなる種類のポートフォリオを構築する際にも極めて重要です。フィルタリングのプロセスで分析する要素としては、他の産業や異なるタイプの借り手へのエクスポージャー、債務が有担保か無担保か、親会社と事業会社のどちらに融資しているか、などが挙げられます。私たちはまた、ポートフォリオ全体で満期日をずらすようにしています。

Zangerlはソーシングについて次のように述べています。

「私たちの優位性は、競争がさほど激しくなく、融資条件がより魅力的な中小規模の借り手を主な対象としていることにあります。」

私たちの顧客基盤は保険会社、ファミリーオフィス、年金基金など多様であり、規制への機敏な対応が求められます。特に、規制が厳しい保険会社のお客様との取引が多いため、市場におけるすべての最新規制を常に把握し、追求している取引がこうしたお客様にとって適切であることを確認するようにしています。

透明性が最も重要であり、アバディーン・インベストメンツには、保険会社のお客様のニーズに合わせた報告書を提供してきた長い歴史があります。私たちは投資家と緊密に連携し、必要とされる情報を特定したうえで、求められる透明性を確保しています。

ストレステストと今後の道筋:不確実性に備える

ストレステストは、リスク管理の不可欠な部分です。プライベート・クレジットのデータはパブリック市場よりも透明性が低いものの、デフォルトに関する調査は、投資適格および資産担保戦略における良好な結果を示しています。

Zangerlは次のように述べています。

「物理的な資産に裏付けられている、市場の投資適格部分を見ると、デフォルトのデータはかなり良好です。ファンド・ファイナンスのような分野では、私たちは一度もデフォルトを経験していません。」

一方で、Zangerlはこの資産クラスの限界も明確に認識しています。流動性はなお本質的に制約されており、投資家はこうした現実を念頭に置いてポートフォリオを構築しなければなりません。

おわりに…

Zangerlの洞察は、プライベート・クレジット投資におけるイノベーション、規律、適応性の重要性を浮き彫りにしています。機関投資家がこのように変化している環境で成功を収めるには、慎重なポートフォリオ構築、厳格なリスク管理、そして発生し得るリスクに備えつつ新たな機会を積極的に受け入れる姿勢が重要になるでしょう。

本内容は、原則として機関投資家のお客様への情報提供を目的として作成・公開しています。

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運用ソリューション

アバディーン・インベストメンツは、主要な資産クラス、地域、市場に関する幅広い専門知識を活用し、お客様が潜在的な投資機会を捉えられるようサポートします