インフラ:主要な柱、メガトレンドとしての運輸
運輸インフラは、都市化、脱炭素化、デジタル化によって大きく変わりつつある世界の中で進化しています。投資家はなぜ運輸を2026年以降の主要な柱であり、メガトレンドであると捉えるべきなのでしょうか。

Part of
The Investment Outlook
所要時間: 2 分
日付: 2025年11月13日
2026年は、人口動態、エネルギー転換、デジタル化といった強力なメガトレンドが投資機会を根本的に変える中、このセクターは伝統と変革の接点に位置し続けるとみられます。
運輸セクターへの投資は投資家に安定性、規模、持続可能性を提供することができるでしょう。しかし同時に、変化するリスクとリターンに関する詳細な理解と、資産運用に対する実践的なアプローチも必要となります。
実物資産の基盤
鉄道、道路、港湾、航空ネットワークといった運輸インフラは、長年にわたり実物資産の主要な柱となってきました。その経済的影響は大きく、欧州では、運輸セクターは国内総生産(GDP)の約5%を占め、1,000万人以上を雇用しています1。
運輸インフラへの投資は地価を上昇させ、地域社会を再生し、新たな産業を支援することで、その地域を根底から変えることが可能です。
例えば、私たちはオーストラリアでキャンベラの都市型ライトレール・システムの建設を支援しましたが、これは地価の劇的な上昇と建設活動の増加につながりました2。
しかし、この重要なセクターは変わらないものではありません。都市化、気候変動への対応、技術革新に牽引され、人やモノの移動方法は変化しています。
人口動態:都市化と移動
2050年までに、英国では都市人口が90%3、欧州全体では84%4に達すると予測されています。このような人口動態の変化は、公共交通機関の輸送能力の拡大、より速いアクセス(移動時間の短縮)、統合された大量輸送システムの必要性を高めています。
そのため、今後数十年間における政策当局の課題は、政府の財源が限られており、民間投資の必要性が高まっている時期に、こうした運輸ネットワークを実現することです。
運輸の脱炭素化:エネルギー転換
運輸セクターは依然として炭素排出量の削減が困難な分野であり、欧州における温室効果ガスの25%以上を占めています5。ここ数年には、エネルギー・セクターの排出量が減少している一方、運輸セクターの排出量は横ばいで推移しています。
とはいえ、鉄道はこの傾向に逆行する形で際立っています。鉄道は運輸排出量全体の1%未満を占めるに過ぎませんが、移動全体の約7%を担っています6。旅客1人を1キロメートル輸送する際の排出量は、乗用車の4分の1以下、国内航空便の約7分の1以下です7。
電化、近代的な車両、デジタル信号システムが効率性と排出量の削減を推進しており、例えば、新型列車はエネルギー使用量を最大30%削減することが可能です8。
英国では、車両の置き換えに投資する確かな根拠があり、その緊急性は高まっています。車両の老朽化が進んでおり、2050年までに需要が最大97%増加すると予測されている9状況で、その必要性は明らかです。同時に、電化目標と2040年までにディーゼル車両を段階的に廃止する計画が、この緊急性をさらに裏付けています。
デジタル化:よりスマートで、より環境に優しいネットワーク
テクノロジーは運輸を大きく変えつつあります。デジタル化は、より優れたプロジェクト設計、予知保全、乗客体験の向上を可能にしています。
鉄道網においては、従来の信号システムをデジタル信号にアップグレードすることで、信頼性、安全性、効率性が向上します。道路に関しては、人工知能(AI)を利用し、より良い洞察を得たり、交通の流れを予測したりするようになっています。
2026年の投資テーマ
- 鉄道 - 成長の基盤:鉄道への投資は、大規模な排出量削減、移動性の改善、経済成長をもたらします。英国の旅客需要は25年以内に倍増する可能性があり、インフラと車両への十分な投資が必要です。欧州では、大陸全体で高速鉄道の導入を加速するための野心的な提案がなされています。私たちは過去10年にわたり、英国とドイツでより新しく、よりクリーンな車両を導入し、現在では1,600を超える車両を管理しています。このアプローチではリース方式を採用しており、車両は「ヘル・オア・ハイ・ウォーター(無条件の義務を負う)」契約に基づき列車運行会社にリースされています。これにより、需要リスクや運営リスクを軽減しつつ、安定したインフレ連動型のリターンが得られます。このリースモデルは低排出ガスの空港地上支援機材にも適用しており、リスクを慎重に管理しながら、運輸セクター全体の脱炭素化を支援しています。
- 次世代トンネルと道路:ロンドンのテムズ川の下を横断するシルバータウン・トンネルは、私たちのプロジェクトの一つです。このトンネルは2025年4月に開通し、市内の渋滞緩和と都市交通の改善に寄与し始めました。当プロジェクトは、「アベイラビリティ契約(稼働保証契約)」を通じて収益を生み出し、最新のテクノロジーを駆使して交通の流れを安全に保つようにしています。テクノロジーは、もう1つの投資案件である米国ノースカロライナ州のI77有料道路プロジェクトにとっても重要です。この地域は過去25年間で人口が著しく増加しており、I77は交通の流動性を高めるうえで重要な役割を果たしています。同道路では、「ダイナミック・プライシング(変動料金制)」を採用し、交通需要に基づいてリアルタイムで通行料金を変動させています。これにより、交通の流れが平均最低時速48マイル(約77km)という一定のペースで維持されるようになっています。
課題とイノベーション
移動需要の増加は脱炭素化の目標と整合させる必要があり、この接点が新たな機会を生み出す可能性があります。
しかし、インフラ・プロジェクトは、特に都市の中心部において、公共設備の移設という課題に直面しており、これには強力な関係構築と慎重な計画が求められます。
AI、デジタル化、自動化といったテクノロジーの進歩は、通勤や運輸ネットワーク管理の方法を大きく変えることになるでしょう。
おわりに
運輸インフラは依然として伝統的なインフラ投資における主要な柱ですが、このセクターは強力なメガトレンドによって根本的に変化しつつあります。
投資家にとっての機会は、よりクリーンで、よりスマートで、より回復力のあるネットワークへの移行を支援することにあります。そうすることで、投資リターンと実社会へのインパクトの両方を実現できるでしょう。
長期的な成長、安定性、プラスのインパクトを求める投資家にとって、運輸インフラは、伝統に根ざしながらも未来を見据えた魅力的な機会を提供する可能性があります。
本内容は、原則として機関投資家のお客様への情報提供を目的として作成・公開しています。
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