新興国債券運用の羅針盤:リスク、リターン、今後の展望
2026年の新興国債券市場を決定づけるトレンドは何でしょうか。本稿では、どこに最大の好機があるのか、注視すべきリスクは何か、またなぜアクティブ投資家が優位に立ち得るのかを解説します。

所要時間: 3 分
日付: 2026年1月12日
それでは、現在の新興国債券投資には、どのような機会、リスク、イノベーション、そしてトレンドがあるのでしょうか。アバディーンの新興国債券部門グローバル・ヘッドであるSiddharth Dahiyaに広範なテーマについて尋ねてみました。
Q:なぜ投資家は2026年に新興国債券を検討すべきなのでしょうか。また、最も魅力的な投資機会にはどのようなものがありますか。
新興国債券は、非常に良好な状態で2026年を迎えました。この資産クラス全体にわたって、様々なプラスの動向が見られます。例えば、ハードカレンシー建て国債では、過去10年間にわたる格下げのトレンドが逆転し、格上げの波が起きています。こうした変化は、多くの新興国においてファンダメンタルズが改善し、強靭性が高まっていることを示唆しています。
現地通貨建て新興国債券も存在感を発揮しています。米ドルは、最近下落しているものの依然として割高であるため、現地通貨建て新興国債券市場の利回りは相対的に魅力的です。このような環境は、投資家にインカムゲインと為替差益の両方を得られる可能性を提供しており、これは現在の市場では比較的稀な組み合わせと言えます。
社債に関しては、ファンダメンタルズは極めて堅調です。新興国企業のバランスシートは、慎重な経営と良好なテクニカル要因に支えられ、世界金融危機以降で最も強固な状態にあります。現在、新興国社債への需要は供給を上回っており、それが投資家にとっての安定したリターンにつながっています。
フロンティア市場も、金の産出国であるガーナの金価格高騰の恩恵による回復からエジプトの経済改革の進展に至るまで、有望とみられます。多くの国がパンデミックの混乱を乗り越えて、力強さを増しています。財政規律は改善し、外貨準備高はより健全な水準になり、債務状況もより持続可能なものとなっています。
要するに、新興国債券はこの資産クラス全体にわたって一連のプラス要因から恩恵を受けており、投資家にとって十分に分散された絶好の投資機会を提供していると考えます。
Q:新興国債券市場は今後12ヵ月でどのように変化すると予想されますか。
私たちは、今年は劇的な変化の年というよりも、着実な勢いが持続する期間になると考えています。目を引くのは、これまであまり注目されてこなかったフロンティア市場を中心とした、現地通貨建て債券への関心の高まりです。投資家は、これらの市場におけるファンダメンタルズの改善と魅力的な利回りに注目し始めています。
資金は数年間にわたって大きく流出した後、再び純流入に転じています。これは、この資産クラスに対する信頼の回復を反映しています。私たちはこうしたプラスの勢いは当面続くと考えています。
Q:独自の可能性を秘めているフロンティア市場はどこですか。また、どのようなリスクがありますか。
フロンティア市場は多種多様な機会を提供しており、それぞれに固有のストーリーがあります。ここでのリスクは、広範なマクロ経済ショックというよりも、むしろ国別の要因に関わるものです。例えば、一部のフロンティア国は原油輸出に大きく依存しており、原油価格の変動に対して脆弱です。
今年すでに、米国がベネズエラのマドゥロ大統領を拘束するというニュースを目の当たりにしました。ベネズエラは2017年からデフォルト状態にあり、このニュースを受けて債券価格は上昇したものの、依然として額面を大幅に下回る水準で取引されています。原油価格に連動する金融商品からの潜在的なアップサイドを考慮すると、これらの債券の最終的な回収価値は現在の市場価格よりも高くなる可能性が高いでしょう。
その他の地域でも大いに期待できる材料が数多くあります。一例としてガーナは、最近の債務再編が成功したほか、金価格の高騰により経常収支が黒字に転換し、外貨準備高が110億米ドルを超える水準に押し上げられました。エジプトとナイジェリアも注目に値します。両国ではディスインフレ傾向と現地通貨建て債券の高い利回りが相まって、実質リターンが魅力的になっています。
このように、フロンティア債ユニバースには、パフォーマンスが良好な米ドル建て債券と現地通貨建て債券から、好転の可能性を秘めたディストレスト債まで、幅広い投資機会があります。重要なのは、各市場の独自のストーリーとリスク特性を正しく理解することです。
Q:投資家が注目すべき新興国債券市場におけるテーマ別戦略はありますか。
いくつかのテーマが新興国債券の市場環境を形成しています。原油の輸出国と輸入国の違いは依然として重要であり、世界的な関税の影響や、現在進行中のニアショアリング(近隣国への生産拠点移転)に向かうトレンドも同様に重要です。
ロシア・ウクライナ紛争の解決の可能性といった地政学的な変化は、状況を大きく変える力があります。停戦や和平合意が実現すれば、特にウクライナにおいて、大規模な多国間支援や投資が始まることになるでしょう。また、エネルギー価格にも影響が及び、エネルギーコストがインフレの要因となってきた新興国経済に恩恵をもたらす可能性があります。
関税は勝者と敗者の両方を生み出しています。例えば、メキシコは米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の下で米国市場への優先的なアクセスから恩恵を受けると期待されていましたが、追加投資の不足により、こうした利益は限定されています。一方、インドは高関税に直面しているものの、比較的閉鎖された経済であることや、輸出が物品ではなく関税免除の対象となるサービス中心であることから、影響は相対的に小さくなっています。
Q:現在の投資環境で、新興国の国債と社債のエクスポージャーのバランスをどのように取っていますか。
私たちは、適切に構築されたポートフォリオにおいて、新興国の国債と社債がいずれも重要な役割を果たすと考えています。国債は格付けの幅が広く、より高利回りの投資機会を提供します。一方、社債は投資適格格付けの発行体の割合が大きく、より質が高い傾向にあります。
国債は一般的にデュレーションが長いため、金利の動きに対してより敏感です。今後金利が低下すると予想される中、国債はアウトパフォームする可能性があります。逆に、金利やボラティリティが上昇する局面では、社債はディフェンシブな特性を提供できます。
投資家はこれらのセグメントを組み合わせ、市場環境や自らの目的に合わせて配分を調整することが可能です。このような分散投資は、新興国債券市場全体でリスクを管理し、機会を捉えるのに役立ちます。
Q:新興国債券のリターンにおいて、為替エクスポージャーはどのような役割を果たしますか。また、為替リスクをどのように管理していますか。
為替動向は新興国債券投資、特に現地通貨建て債券市場において重要な要素です。昨年は、対米ドルの為替レートの上昇がパフォーマンスに大きく寄与しました。投資家は現地通貨建て債券市場では、為替差益と利回り低下の両方から恩恵を受けることが可能です。ドルの下落が続いた場合、現地通貨建て新興国債券は引き続き魅力的な選択肢となるでしょう。
為替リスクの管理は、特に民間企業の発行体にとって極めて重要です。私たちは企業の為替エクスポージャーを注視しており、収益と負債の両方がドル建てであるような、「ナチュラル・ヘッジ」ができている企業を好みます。ナチュラル・ヘッジが機能しない場合には、リスクを軽減するために強固なシンセティック・ヘッジ(デリバティブなどを用いた代替的なヘッジ)戦略が取られていることを求めます。結局のところ、重要なのは規律であり、ポートフォリオが突然の為替変動に耐えられるようにすることです。
Q:世界的な金融政策の転換、特に利下げの可能性が、新興国債券のパフォーマンスにどのような影響を与えるとみていますか。
世界的な利下げは新興国債券にとって朗報です。無リスク金利の低下は新興国市場のような高利回り市場の魅力を高め、投資家が追加的なキャリー収益を求める動きを後押しします。米国債の利回りが低下すると、新興国債券に資金を配分するインセンティブが高まり、資金流入が促進され、パフォーマンスが支えられます。
金融環境の緩和は、新興国市場により多くの資本が供給されることも意味し、しばしば投資と成長の好循環を生み出します。また、利下げは通常、米ドルに下押し圧力をかけるため、現地通貨建て新興国債券戦略のリターンをさらに向上させる可能性があります。
Q:今後1年間に新興国債券の価値を顕在化させる要因としてはどのようなものが考えられますか。
そうした要因は数多く存在します。各国固有の改革、債務再編の成功、地政学的な変化はいずれも状況を大きく変える可能性があります。投資家の関心の高まりと資金流入の増加も重要です。新興国は世界の成長の約半分を占めているにもかかわらず、ほとんどのポートフォリオにおいて小さな部分を構成するにとどまっています。新興国市場へのアロケーションの拡大という長期的な構造変化が起これば、投資家にとって大きな価値が顕在化することになるでしょう。
Q:新興国債券を現在検討している投資家にとっては、どのようなアロケーション戦略が合理的でしょうか。アクティブ運用対パッシブ運用、ハードカレンシー建て債券対現地通貨建て債券の観点から教えてください。
私たちはアクティブ運用が最も合理的であると考えています。この資産クラスは多様で固有の性質を持っており、アクティブ運用者がパッシブな手法を一貫して上回っている証左があります。このように複雑な市場においては、熟練した銘柄選択、リスク評価、国別分析が、パッシブなエクスポージャーでは決して模倣できないような大きな価値をもたらす可能性があります。
ハードカレンシー建て債券と現地通貨建て債券のいずれを選択するかは、リスク許容度によります。現地通貨建て債券にはより大きな潜在力がありますが、ボラティリティも高くなります。一方、ハードカレンシー建て債券は、特に投資適格セグメントにおいてディフェンシブな特性を提供できます。
朗報として、今年は新興国債券のすべての分野が何らかの価値をもたらすことが可能と考えており、投資家は自らの目的や市場見通しに合わせてアロケーションを調整することができるでしょう。
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