不動産:2026年、レジリエンスがもたらす機会とは
2026年、レジリエンスが不動産業界を再構築します。どのセクターが最良の機会を提供するのか、そして変化する世界において投資家はどのようにポートフォリオの将来性を確保すべきでしょうか。

Part of
The Investment Outlook
所要時間: 3 分
日付: 2025年11月13日
地政学的、経済的、技術的、環境的な圧力によって状況が変化する中、投資家には、レジリエントな経済と社会を支えるミッションクリティカルな資産を構築し所有する、世代を超えた機会が訪れています。
レジリエンスが今、重要な理由
防衛技術への政府投資からグローバルサプライチェーンの混乱に至る最近の出来事は、不確実性を乗り切れる物理的・デジタルインフラの必要性を浮き彫りにしました。
不動産はこの変革において基盤的な役割を担い、新たな機会が生まれています。構造的に高い需要の源泉を特定することで、投資家は、より不安定な時期においても経済やコミュニティの機能を維持するシステムを支える必要性から生じる機会を捉えることができます。
以下に、レジリエンスが需要を牽引し、不動産投資家に選択肢を生み出すと見込まれる4つの分野をご紹介します。
1. 産業用不動産:経済的レジリエンスの基盤
世界的な再工業化の動きが産業用不動産の様相を変えつつあります。国内生産を促進する政策により、グローバルブランドは米国を皮切りに、現在では他の地域でも製造拠点の拡大に数十億ドルを投資しています。
欧州では防衛と経済的自立が最優先課題となっています。例えば欧州連合(EU)の800億ユーロ(約9兆3300億円)規模の「チップス法」1はデジタル経済における自立を支援するものであり、また「欧州の安全保障と行動(SAFE)2イニシアチブ」は防衛分野におけるより結束したアプローチの構築を目指しています。
化学、医薬品、エネルギー、食品生産分野における同様の欧州政策は、重要なバリューチェーンの確保を目的としています。この政策転換により、近代的な研究開発施設、生産拠点、物流倉庫への需要が高まっており、図表1では賃料成長への明確な影響が確認できます。
図表1:欧州不動産セクターにおける純営業収益の成長率
レジリエンスの実践:生産拠点を自国に近づけることで、企業とその占有物件は世界的な混乱の影響をより受けにくくなります。投資家にとって、産業用不動産はこうした需要の構造的変化に支えられ、より強力な収益成長とリターンの可能性を提供します。
2. 住宅:レジリエントなコミュニティの構築
住宅は単なる住居ではなく、レジリエントな社会の基盤です。欧州では「賃貸住宅」が最も取引量の多いセクターとなり、2026年も主要な投資テーマであり続けます。新しい住宅の緊急な需要が、投資家の目標やより支援的な政策とついに一致し始めています。
例えばドイツでは慢性的な住宅不足が深刻化し、強力な政策介入が行われていますが、これらが新規供給の障壁を高める結果となり、図表2に示す予測通りの供給不足が継続する見込みです。しかしながら、「バウ・ターボ 」3計画や2029年までに約235億ユーロの追加資金投入 4といった政府改革により、手頃(アフォーダブル)な価格の補助付き住宅の開発が加速しております。
これにより、長期的な需要を牽引する要因に支えられ、投資家のニーズと手頃な住宅を求める人々の双方を満たす金融インセンティブや取引構造によって裏付けられた、安定的でインフレ連動型の収益を得る新たな機会が生まれています。
図表2:住宅着工件数と推定長期需要
一方、英国の「ビルド・トゥ・レント(BtR)」セクターも勢いを増しています。コミュニティ中心の 開発(包括的なアメニティ、緑地、居住者向けサービスを備えた入念に設計された住宅)に焦点を当てることで、投資家は強靭なコミュニティの育成と入居者の入れ替わり率低減を図ることができます。
半開発状態の「ブラウンフィールド」用地におけるBtR計画は、地域経済やインフラの活性化に寄与する可能性があります。また、このセクターの市場シェアが(他市場と比較して)小さいことは、英国の投資家にとって大きな成長の可能性を示唆しています。
レジリエンスの実践:コミュニティ重視の住宅への投資は、社会の安定とコミュニティの回復力を支え、投資家にとって拡張性のある目的志向の住宅ポートフォリオ構築の機会となります。
3. レトロフィット:住宅不動産の気候変動への耐性強化
EUの住宅建築物の約75%はエネルギー性能が不十分です5。この課題に対処するため、改正された建築物エネルギー性能指令(EPBD)は基準を引き上げ、最低エネルギー基準を義務付け、物件の改修を促進しています。さらに2027年からは、EU排出量取引制度IIにより6不動産投資家は排出量の削減または相殺が義務付けられ、改修の緊急性が高まっています。
住宅のエネルギー効率向上は、単なる規制順守にとどまりません。気候リスクに耐える将来を見据えた資産価値の確保が目的です。新基準を満たす物件は、家主と入居者の双方にとって運営コスト削減につながり、魅力と価値の向上をもたらします。アパートメント間の効率性の差が投資パフォーマンスの二極化を促進しているという証拠が増えています。
レジリエンスの実践:2026年に住宅資産からの収益向上を目指す投資家にとって、これは欧州の老朽化した在庫住宅の脱炭素化と近代化を通じて付加価値を創出する機会です。持続可能な投資目標に沿い、レジリエントで気候変動を意識したポートフォリオ構築を支援します。
4. データセンター:未来に向けたデジタルレジリエンス
データセンターは今や重要インフラです。人工知能(AI)とリアルタイム接続が経済・社会のレジリエンスに不可欠となる中、データセンター容量の需要は急増する見込みです7。2025年の82ギガワット(GW)から2030年までに219GWに達すると予測されています8。
持続可能性、過剰開発、陳腐化に対する懸念はあるものの、データ処理能力と技術的レジリエンスを構築する圧力は非常に強まっています。フランクフルト、ロンドン、アムステルダム、パリ、ダブリンの『FLAPD』市場は、欧州のデータ自律化への取り組みを牽引していますが、英国と欧州が信頼性の高い再生可能エネルギー源に接続された地域でレジリエンス強化と新規容量確保を図る中、機会は拡大しています。そして他の地域も同様の道を歩んでいます。
レジリエンスの実践:データセンターは技術的自律性を通じて国家安全保障を支え、経済活動の継続性を確保します。これらは現代社会のデジタル基盤の重要な構成要素であり、デジタル時代における投資家ポートフォリオにとって魅力的な選択肢となり得ます。
おわりに
不動産は、強靭な経済と社会を構築する上で中核的な役割を担います。2026年、投資家が従来の商業資産以外の機会を模索する中、産業用不動産、手頃な価格の地域密着型住宅、省エネルギー改修、データセンターなどが最も魅力的な戦略となる可能性があります。
経済的・社会的・環境的安定を支える不動産に焦点を当てることで、レジリエンスをテーマ戦略に組み込む投資家は、2026年以降の数十年にわたり、長期的な成功を収めるための最良の立場に立つでしょう。
本内容は、原則として機関投資家のお客様への情報提供を目的として作成・公開しています。
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