経済インフラ・アップデート:2025年第3四半期
2025年第3四半期の経済インフラ・ポートフォリオにおける主な進展について紹介します。

所要時間: 4 分
日付: 2025年10月21日
「2025年第3四半期には、Airbandによる地方での高速インターネットアクセスの拡大や、フィンランドにおけるエネルギー転換の取り組みの推進などポートフォリオ全体で投資案件の運営に目覚ましい進展がありました。私たちは運用にサステナビリティ(持続可能性)を組み込むアプローチによって、環境へのプラスの影響と投資収益を両立させる機会を創出しています。そして、戦略的オフサイトミーティングの成功やグローバルな投資家との対話の継続を通じて、下位ミドルマーケットの多様なインフラに焦点を当てた投資アプローチが、目下の進化する市場環境においても有効かつ底堅いものであることに自信を深めています。当四半期のアップデートの一部として、いくつかの考察やレポートに目を通していただければ幸いです。」
Dominic Helmsley、経済インフラ運用責任者
投資の最新状況
Airbandが事業をさらに発展させる
Airbandは第3四半期にネットワークの導入を大幅に強化することで事業を拡大し、月間1,000件以上の新規顧客をネットワークに接続するという歴史的な記録を達成しました。こうした成長を後押ししたのは、成熟したマーケティング戦略と、設置作業員の効率的な活用を可能にした契約数の増加でした。
さらに、Airbandは8月に新たなワイヤレス・サービスの投入を成功させました。これは、長距離でも毎秒1ギガビットのサービスを提供できるものです。Airbandは、既存の基地局資産と自社の技術的専門知識を活用し、この種のサービスを十分な規模で提供する最初の企業です。9月には、英国最大のデジタル経済イベントであるConnected Britain Awards 2025でワイヤレス・イノベーション賞を受賞しました。この分野における当面の焦点は、新サービスを展開し、既存または計画中の光ファイバー回線を持たない最大20万件の施設を新たにネットワークに接続することです。
「厳しい逆風に直面している業界で事業を展開しているAirbandの業績について、このように明るい報告ができることを大変嬉しく思います。同社の事業は英国で最も通信環境の整備が難しい地域に接続性を提供することに注力しており、これは私たちの投資仮説において重要な要素となってきました。Airbandは、この点で有利な守りの立場を活かす態勢が整っています。新たなワイヤレス・サービスの機会は、Airbandの将来の成長見通しをさらに高めており、同社には既存のサービス提供地域の内外を問わず、極めて地方の農村部における通信格差を埋める能力があります。」
Alex Anderson、インベストメント・ディレクター

Outokummun Energia:データセンターの排熱を地域熱供給顧客にタイムリーに提供
2025年第1四半期の経済インフラ・アップデートで紹介した通り、Outokummun Energia(OKE)はデータセンター開発会社であるE-heatと10年間固定価格の熱供給契約を締結しました。当該データセンターは稼働を開始し、排熱を利用した排出量ゼロの熱源を供給しています。OKEのネットワークはすでに再生可能エネルギーを十分に活用していますが、今回の取り組みはエネルギー転換をさらに一歩進めるもので、燃焼燃料の必要量を約50%削減することにつながります。これにより、バイオマスボイラーを年間4〜6ヵ月停止できるようになり、二酸化炭素換算で350トンの排出量も削減されます。このデータセンターのサーバー容量は、フィンランドのすべての家庭にあるようなサウナヒーター480台分に相当します。
「このプロジェクトは、安価な熱源、設備投資の必要性の低下、燃焼燃料の削減という3つのメリットを兼ね備えており、OKEの事業にとって非常に好ましいものです。これは、アバディーン・インベストメンツが金融面と環境・社会・ガバナンス(ESG)面の主要パフォーマンス指標を組み合わせることで、サステナビリティをどのようにビジネスの意思決定に組み込んでいるかを示す好例と言えるでしょう。」
Maciej Tarasiuk、投資責任者、経済インフラ担当

Aurisはバイオメタン生産でフィンランド産業のさらなる脱炭素化を支援
Aurisは大規模なクリーンエネルギーの取り組みとして、フィンランドのサキュラで5,000万ユーロを投じて新たなバイオガスプラントを建設することを計画しています。このプロジェクトは、循環型経済と地域のサステナビリティ目標の両方を支援するものです。建設するプラントは、地元の農業や産業から生じる副産物を活用し、廃棄物を価値ある資源に転換します。
この施設は稼働時に、年間約23万トンの原材料を処理し、130ギガワット時の再生可能バイオガスを生産することで、産業および運輸分野のニーズに応える予定です。また、クリーンエネルギーに加えて、地元の農地を豊かにするリサイクル肥料や、合成燃料(e-fuel)の生産を支える生物由来の二酸化炭素も生成します。
このプロジェクトはサタクンタ地域に、建設段階で数百人の雇用を創出するとともに、数十人の恒久的な雇用を実現するなど、大きな経済的利益をもたらすと予想されます。投資決定は2026年春に予定されており、2028年の生産開始を目指しています。
「産業・運輸分野における再生可能バイオガスの需要は急速に高まっています。このプロジェクトは、フィンランドのエネルギー供給の安定性を強化し、カーボンニュートラルの目標達成を促進するとともに、サタクンタ地域に持続可能な成長をもたらすでしょう。」
Anni Sarvaranta、Auris最高経営責任者(CEO)

サステナビリティ
当チームは先般、2025年サステナビリティ報告書を公表しました。今年の報告書は、サステナビリティを戦略に組み込み、必要不可欠なインフラに投資してきた10年間の節目となるものです。報告書の要点は以下の通りです。
私たちのアプローチ: リスク管理の支援と価値の創造におけるサステナビリティ要因の役割を強化し、これを投資のライフサイクル全体に組み込んでいます。
主要なテーマ
- 移行リスクと脱炭素化:フィンランドでの排熱回収からバイオメタンの生産拡大に至るまで、投資する資産を低炭素経済と整合させています。
- 気候変動の物理的リスク:ポートフォリオ全体にわたるストレステストにより、複数の気候シナリオの下でのパフォーマンスの底堅さを確認しています。
- 生物多様性:新たなツールを試験的に導入して自然関連リスクを評価するとともに、ポートフォリオ全体でネイチャー・ポジティブ(自然再興)の取り組みを支援しています。
私たちは、サステナビリティに関するリスクを管理し、投資機会を捉えることで、長期的な価値を提供することに引き続き注力しています。
ネットワークの活用
変化する世界におけるサイバーセキュリティ:フィンランドでのサイバーセキュリティ・フォーラム
ここでは、アバディーン・インベストメンツの経済インフラ戦略が実施した重要なエンゲージメント活動についてご報告します。私たちは2025年6月にフィンランドで、投資先企業の最高経営責任者、技術的リーダー、サイバーセキュリティの専門家や、シニアアドバイザー、業界専門家を招き、部門横断的なサイバーセキュリティ・セミナーを開催しました。
概要:
- 変化している欧州のサイバー脅威の現状について、ハイブリッドな脅威やサイバー犯罪のプロ化が進んでいることに焦点を当てて検討しました。
- アバディーン経済インフラ・サイバーネットワークを設立し、脅威情報のリアルタイム共有、合同演習、機密性の高いインシデント登録を可能にしました。
- 協調的な調達や、ベストプラクティスを一元管理するリポジトリを導入し、ポートフォリオ全体のセキュリティの一貫性と効率性を高めました。
- 欧州連合(EU)のNIS2指令を含む規制の進展に対応するとともに、フィンランドのサイバーメーターのようなサイバーセキュリティの成熟度を評価・改善するツールを推進しました。
こうした取り組みは、私たちが積極的な資産運用と事業のレジリエンス(耐性・回復力)に注力していることを反映しています。また、アバディーン・インベストメンツが広範なネットワークを活用し、中規模企業が業界最高水準の事業運営を実現するのを支援できることも示しています。例えば、サイバーセキュリティのような共通の関心分野では、協力と専門知識の共有により、大きな成果をもたらすことが可能です。
イベント
IPEM
アバディーン・インベストメンツは2025年9月24~26日にパリで開催されたIPEMC会議にスポンサーとして参加しました。イベントの一環として投資家や関係者の皆様と交流し、インフラ市場の最新動向について議論できたことを大変嬉しく思います。また、経済インフラ・チームは、イベント初日の午前中に投資家に情報を提供する朝食会を開催しました。

北欧でのラウンドテーブル
9月にはストックホルムとヘルシンキで、「サステナブルなインフラにおける価値創造」をテーマに、2つの投資家向けラウンドテーブルを主催しました。これらのラウンドテーブルでは、最近公表した2025年のサステナビリティ報告書で取り上げたテーマやケーススタディをもとに、私たちがいかにしてビジネス目標とサステナビリティ目標を戦略の中で両立させているかを具体的に紹介しました。こうしたイベントに皆様が積極的に参加して下さったことに感謝しています。今後数ヵ月には他の地域でも同様のイベントを開催する予定です。
アジア太平洋地域への出張
Dominic Helmsley(経済インフラ運用責任者)とMaciej Tarasiuk(投資責任者、経済インフラ担当)が数年ぶりに韓国と日本を訪問し、アジア太平洋地域の投資家や関係者と意見を交換しました。アバディーン・インベストメンツは、PEIソウル・フォーラムに協賛し、このフォーラムではHelmsleyが小規模なインフラ資産がエネルギー転換にもたらす価値について基調講演を行いました。欧州の中小規模のインフラに対するアジアからの関心は引き続き高くなっています。ポートフォリオの最新情報や、現在進行中のエキサイティングな取り組み、将来の計画について共有できたことを光栄に思います。

Financial Investigatorコンファレンス
投資責任者のMaciej Tarasiukがオランダのアムステルダムで2025年9月22日に開催されたFinancial Investigatorコンファレンスでプレゼンテーションを行いました。「Unlocking sustainable value: the role of infrastructure small-caps in the energy transition」と題したこのプレゼンテーションでは、アバディーン・インベストメンツの下位ミドルマーケット・インフラ戦略が、金融、レジリエンス、ESG面の目標を組み込みながら、どのようにエネルギー転換という課題に貢献しているかに焦点を当てました。
また、TarasiukはFinancial Investigator誌に寄稿し、下位ミドルマーケットが競争の少ないインフラ投資の魅力的なエントリー・ポイント、積極的な資産運用の機会、売却時の企業価値向上の可能性をどのように提供しているかを論じました。
記事全文はこちらからお読みいただけます。

100 Women in Financeイベント(2025年9月16日、ロンドン)
Maciej Tarasiukは、「Building the future: infrastructure investment in a changing world」と題したパネルディスカッションに参加し、進化する世界のインフラ環境に関する活発な議論に貢献しました。「100 Women in Finance」は、多様性とイノベーションを推進する取り組みであり、投資の未来を形作る議論をリードしています。
チームのオフサイトミーティング
7月にチーム全員が集合し、毎年恒例の夏期オフサイトミーティングを開きました。これは、チームが戦略を見直し、2026年以降の焦点を明確にし、インフラの未来を考察する貴重な機会となりました。

上記の企業は例示であり、投資運用スタイルの説明のみを目的としているもので、将来の運用成果を示唆又は保証するものではなく、また、これら特定の投資等の勧誘や推奨ではありません。
本データは当資料作成時点における事例を参考のために表示したものであり、今後もこれらの投資を継続することを保証するものではなく、また、本データから他の投資の価値等の推移を類推することはできません。
本内容は、原則として機関投資家のお客様への情報提供を目的として作成・公開しています。



