アバディーンのコンセッション・インフラ戦略は、重要な公共サービス、社会的流動性、脱炭素化への投資に重点を置いており、投資家に予測可能な長期的リターンをもたらすことを目指すと同時に、アバディーンのサステナビリティへの取り組みを支えています。
脱炭素化の重要な要素はエネルギー転換であり、これは化石燃料ベースのエネルギー生産(石油、天然ガス、石炭など)から低炭素排出エネルギー源への移行を指します。世界の炭素排出量のうち約30%を発電と暖房が占めており、地球温暖化や新たなテクノロジーの台頭を背景に電力需要は増加の一途をたどっています。よりクリーンなエネルギー源への構造的な移行を踏まえると、発電を脱炭素化する必要性は高まる一方でしょう。
嫌気性消化(AD)プラント - 有機廃棄物を再生可能エネルギーに変換
エネルギーを生み出す方法の1つは有機廃棄物を利用することであり、これには「循環経済」に貢献するという追加的なメリットもあります。ADプラントとは、本来であれば埋め立て、土地散布、焼却によって処理される廃棄物を転用し、バイオメタンや土壌改良剤(すなわち肥料)を生産する施設です。そのため、ADプラントは2つの側面(化石燃料の消費低減と廃棄物からの炭素排出量削減)で炭素排出量を削減するもので、英国政府の政策による支援も受けています。特に、グリーンガス支援スキーム(GGSS)は、嫌気性消化によってバイオメタンを生産してガスグリッド(供給網)に送り込むプラントに補助金を提供しています。補助金は、こうしたプラントの開発を促進する一方で、納税者にとっての費用対効果を確保することを目的に、規制当局が算出します。
ディーサイドADプロジェクト
アバディーンのコンセッション・インフラ戦略は最近、ディーサイドADプロジェクトに投資しました。これは、北ウェールズのディーサイドに最先端の施設を建設し、食品廃棄物からバイオメタンを生産するプロジェクトです。この種の施設は、食品やその他の有機廃棄物を再生可能エネルギーやグリーン肥料に変換することで、英国の排出量削減や循環経済への移行を支援するうえで大きな役割を果たすとみられます。プラントの設計にも、低炭素材料(コンクリート、鉄鋼、セメント)の使用、地元産材料の使用、廃棄物や発酵残渣(消化液)を輸送する車両でのバイオメタンの使用など、低炭素への配慮が盛り込まれています。
ADプラントは、酸素がない状態でバクテリアを利用して有機性廃棄物を分解し、バイオガスを生成した後、二酸化炭素(CO₂)などの不純物を除去してバイオメタンに精製します。生成されたガスは英国国内のエネルギーグリッドや隣接する産業パートナーに販売されるほか、熱電併給(CHP)エンジンを稼働させてグリーン電力を生産するために施設内で利用され、この電力もグリッドや隣接する産業パートナーに販売されます。精製過程で発生する生物起源の炭素排出物は、現場で回収、液化、貯蔵された後、商用利用向けに販売されます。
ディーサイドADプロジェクトは、アバディーンのコンセッション・インフラ・チームにとって英国のエネルギー転換を支えるセクターにおいて重要な案件であり、投資家のお客様の目標とも合致しています。また、このプロジェクトは、私たちのパートナーであるCircular Economy Development Limited(TCE)にとってマイルストーンとなるものです。同社の主な目的は、低炭素およびマイナス炭素の再生可能エネルギー・プラントを開発し、脱炭素化を推進することです。
ディーサイドADプラントでは、0.984 gCO₂e/kWhという極めて低いライフサイクル・エミッション・インテンシティーの達成が見込まれており、この数値はEUが持続可能な発電のために設定した100 gCO₂e/kWhの上限を大幅に下回っており、英国のグリーン・タクソノミーの枠組みに沿っています。このADプラントの炭素排出は主に生物起源であることから、自然の炭素循環の一部であり、大気中のCO₂の純増にはつながりません。したがって、このプラントは国連の持続可能な開発目標との整合性も高く、「カーボン・ゼロ」と言うことができます。
プラントの設計・建設全体を通じて相当量の排出が回避される見通しで、耐用年数中の回避排出量は約180万tCO2e相当と予想されています1。これには以下が含まれます。
- 食品・バイオ廃棄物を埋め立て、土地散布、焼却処分からADプラントに転用することで回避される炭素排出量
- 生産過程に加えて、土壌施用時にも化学変化によって温室効果ガスが排出される化学肥料を置き換えることで回避される炭素排出量
- クリーンエネルギー(バイオメタン)を生成して熱や電力を供給し、グリッド排出量を置き換えることで回避される排出量。これは特に、プラントで生産されるバイオメタンや電力が、グリッド天然ガスやグリッド電力に取って代わることで実現されます。
「ディーサイドADプラントへの投資は、アバディーンのGlobal Sustainable Infrastructure Partners戦略の最初の案件でした。これは、当戦略が投資家の皆様の目標と合致した投資を行うと同時に、世界的なエネルギー転換をどのように支援できるかを示す格好の例と言えるでしょう」
Karen Hill、サステナブル投資ヘッド、コンセッション・インフラ
- 排出削減量と排出原単位は、投資先企業の株主であるアバディーンの投資ビークルとTCEの要請により、投資先企業が任命した独立コンサルタントであるAecom Limitedが実施したホールライフサイクル・カーボン・アセスメントの一環として算出されたものです。