債券:クロスオーバー・クレジットの「スイートスポット」にインカム機会を見出す
投資適格格付け(BBB格)から投機的格付け(BB格)にまたがる「クロスオーバー」領域が、なぜグローバル・クレジット市場において最も魅力的な分野の一つとなっているのでしょうか―市場の最もリスクの高い部分に踏み込むことなく、ハイイールド債に近いインカムを提供する理由を解き明かします。

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The Investment Outlook
所要時間: 2 分
日付: 2026年2月12日
債券投資において、投資家は常に「トレードオフ(二者択一)」を強いられることに慣れています。通常、利回りが高いということは、ボラティリティが大きく、財務基盤が脆弱で、デフォルトの可能性が高いことを意味します。一方で、低リスクの債券は、特に経済の先行きが不透明な局面では、わずかなインカムしか得られないことが少なくありません。
しかし、格付けとリスクの関係はそれほど単純なものではなく、実態はより複雑です。実際、市場には「インカムの向上が大きい一方、追加的なリスクは多くの人が想定しているよりもはるかに小さい」という明確な領域が存在します。それこそが、投資適格格付けの最下位(BBB格)と投機的格付けの最上位(BB格)にまたがる「クロスオーバー・クレジット」と呼ばれる領域です。
この領域は、過去四半世紀にわたり、債券市場の中でも極めて優れたリスク調整後リターンを着実に提供してきました。BBB格とBB格の債券をバランスよく組み合わせたポートフォリオは歴史的に、ハイイールド債市場全体に近いリターンを生み出す一方で、ボラティリティや長期的なデフォルトは投資適格債にはるかに近い水準にとどまっています。
利下げの時期を巡る不透明感や地政学的なサプライズ、不安定な投資家心理が渦巻く目下の不確実な環境で、こうしたインカムとレジリエンス(価格下落耐性)の両立は特に魅力的になっています。
「スイートスポット」を理解する
クロスオーバー・クレジットは、グローバル債券市場において非常に興味深い接点に位置しています。格付けが低下するのに伴い利回りは確かに上昇しますが、リスクの増加は決して直線的ではありません。
デフォルトや大幅な価格下落は通常、低格付けのB格やCCC格以下の発行体に集中する傾向にあります。対照的に、BBB格やBB格の企業は、より規模が大きく、事業基盤が確立されており、自己資本も充実していることが多いのが特徴です。また、これらの企業は資金調達手段も豊富であり、景気サイクルを通じて事業を運営していく確かな能力を備えています。
そのため、A格からBBB格の債券へと一歩踏み出すことで、多くの場合、基調的なリスクの上昇を抑えつつ、インカムを増やすことが可能だと考えます。 また、BBB格からBB格へと移行すれば、利回りは一段と向上しますが、信用力がさらに低い層で見られるようなデフォルト・リスクの急激な上昇は、依然として回避することができます(図表1)。
言い換えれば、投資家はハイイールド債の中でもリスクが非常に高い領域に踏み込む手前で、追加的な利回りの大半を確保できるということです。
多様化と成長が続く投資機会
このクロスオーバー領域において、最も正当に評価されていない特徴の一つが、市場規模の大きさです。過去20年間には、企業の成熟やデレバレッジ(負債削減)、あるいは格付け区分間での移動により、BBB格およびBB格のユニバースは著しく拡大してきました(図表2)。
現在では、この市場領域は、米国、欧州、アジア、新興国市場にわたる2,300以上の発行体を網羅しています。これは、インカム重視の投資家にとって、厚みがあり多様性に富むハンティング・グラウンド(投資機会の宝庫)となっています。
重要な点として、このユニバースには金融機関劣後債やコーポレート・ハイブリッド証券といった特殊な仕組みを持つ債券も含まれています。こうした商品は、景気サイクルの様々な局面で、魅力的な利回りを得る機会を提供することが可能だと考えます。
アクティブ・マネジャーにとって、この市場の幅広さは、過小評価されている債券の特定、相対価値の歪みの捕捉、さらには格付け変更を見据えたポジションの構築など、継続的な機会を得るうえで助けとなります。
ライジング・スターとフォールン・エンジェル ― なぜこれらが重要なのか
クロスオーバー・カテゴリーが優れたパフォーマンスを達成するうえで、2つのタイプの発行体が重要な役割を果たしています。
フォールン・エンジェル ― 投資適格格付けからBB格に格下げされた企業が発行する債券は、投資適格債しか保有できない投資家による強制売却に直面することが少なくありません。このような機械的な売り圧力は、企業のファンダメンタルズが正当化する水準を超えて価格を押し下げることがあります。これは、忍耐強い投資家にとって、魅力的なエントリー・ポイントとなり得ます。加えて、多くの発行体は、コスト規律や資産売却、借り換えなどを通じて、投資適格への復帰に向けて迅速に行動します。これらの取り組みは、債券価格の回復をさらに後押しする可能性があります。
ライジング・スター ― フォールン・エンジェルとは対照的に、投機的格付けからスタートし、財務基盤や事業業績の改善に伴って投資適格に格上げされていく企業です。こうした企業が発行する債券は、格上げが近づくにつれて価格が再評価されて上昇することが多く、このような転換を早期に見極めることのできる投資家に利益をもたらします。
フォールン・エンジェルとライジング・スターは、クロスオーバー領域の主な優位性である「長期的な構造的非効率性」をさらに強固にしており、アクティブなクレジット・リサーチを通じてこうした非効率性を特定することで、定期的に機会を得ることが可能になります。
なぜ今、クロスオーバー・クレジットが注目されるのか
歴史的に見ると、市場の不安が高まる時期には、耐性を備えたインカムの価値が浮き彫りになってきました。現在はまさにそのような局面です。中央銀行がインフレ・リスクと景気減速の兆候の間で難しい舵取りを迫られる中、投資家は過度なリスクを取ることなく、安定したリターンを得られる投資先を再び模索しています。
クロスオーバー・クレジットが際立っている理由は、主に以下の3点です。
- 安定したインカム:市場の最もリスクの高い領域を回避しつつ、ハイイールド債の追加的な利回りの大半を確保できる可能性があります。
- 恒常的な価格の歪み:格付けの変化やインデックスの仕組み、投資家の過剰反応といった要因が、熟練したマネジャーに継続的な機会を生み出します。
- 長期運用にとっての信頼できる基盤:利回り、流動性、信用力のバランスが取れているため、インカム重視の戦略における自然なアンカー(支柱)となります。
おわりに
BBB格からBB格にまたがるクロスオーバー領域は、ニュースで派手に取り上げられることは多くはありません。しかし、長年にわたる優れたリスク調整後リターンの実績と、それを支える構造的なダイナミクスにより、グローバル債券市場において重要な位置を占めています。
経済・政治情勢が刻々と変化する現在、クロスオーバー・クレジットは、投資家にとって稀な組み合わせ、すなわち、高いインカム、ハイイールド債の大半と比較して低いデフォルト・リスク、慎重な銘柄選定が報われる厚みのあるユニバースを提供します。
本内容は、原則として機関投資家のお客様への情報提供を目的として作成・公開しています。




