魅力的な利回りと通貨リスクの低減により、ヨーロッパだけでなく多くのアジアの投資家にとっても有望な選択肢となる可能性があります。
この急激な変化は、米国の「例外主義」が薄れつつある状況の中で起きており、資本の流れの多様化を促しています。
ユーロ建て社債が注目される理由
米国の例外主義(経済の強さ、イノベーション、金融の世界的優位性により、米国市場が長期投資において特別に魅力的で信頼できるとする考え方)は、徐々にその力を失いつつあります。
これにより、アジアの投資家、特に日本の投資家によるユーロ建て投資適格社債への資本配分が増加すると予想されます。この資産クラスは、ドル建て債券よりも高い利回りを提供しています。
分散投資と利回りを求めるアジアの投資家からの関心が高まると予想しています。アジアの投資家はこの資産クラスへの投資が少なく、今後の成長の余地があります。
同様に、ヨーロッパの投資家も、米国の政治的不確実性や高いヘッジコスト、そして3%以上の魅力的な利回りが欧州域内で得られることから、ドル建て資産への配分を減らすと予想されます。
過去数年間、ヨーロッパの投資家は低金利の解決策を求めて域外に資本を移していましたが、域内の利回りが改善する中で、ヘッジコストや通貨リスクなしで投資できる環境が整い、資本の流れは逆転するでしょう(図表1参照)。
注:ユーロ建てにヘッジした後の米ドル建て社債の利回り。
ヘッジコストとは、外国通貨建て資産に投資する際に通貨変動の影響を回避するために支払う費用です。
近年、ユーロ建て社債市場は約3.2兆ユーロ(3.8兆米ドル)にまで成長し、米ドル建て社債市場の約40%の規模となっています。その市場の広さと深さにより、多くの投資家にとって投資可能な市場となっています。
短期的には、北半球の夏季に社債の発行が減少することで、パフォーマンスのさらなる支援材料となるでしょう。
4月の大規模な債券価格の下落以降、クレジットスプレッド(社債と同期間の国債との利回り差)は回復傾向にあり、企業の健全な財務状況に支えられ、依然として国債に対して十分なプレミアムを提供しています。
全体として、ユーロ建て社債は、過去10年間の平均を大きく上回る3%以上の利回りを提供しており、投資家にとって魅力的な価値を持つと考えています。
米国の魅力低下
米国は長年にわたり、経済力、イノベーション、ドルの基軸通貨としての地位、そして世界的影響力によって、莫大な資本流入を享受してきました。
しかし、成長見通しの悪化、政府債務の増加、政治的分断、そして同盟国を遠ざける外交政策により、この特権は徐々に失われつつあります。
現在、外国人投資家(特にヨーロッパとアジアの投資家)は、米国社債市場の約25%を占めています。米国が世界最大の資本市場であり続ける可能性は高いものの、外国人投資家が現在の配分から分散を図る理由は以下の4点です:
- 政策の不確実性現政権は国際的な規範や制度に挑戦的です。
- 財政赤字の拡大米国政府の債務増加は、米国債への信頼を損ないます。
- ヘッジコストの上昇通貨間の金利差が拡大しています。
- 魅力的な代替案の登場ユーロ建て社債などの選択肢が現れています。
2025年上半期、米国社債はドル建てで4.2%のリターンを記録しましたが、ユーロを基準通貨とする投資家にとっては8.06%の損失、円を基準通貨とする投資家にとっては4.23%の損失となりました(ICE BofA US Corporate Indexによる)。
これは、米ドルがユーロに対して14%、円に対して9%下落したことによるもので、ドル安が続く限り、外国人投資家が保有するドル建て資産のリターンは引き続き圧迫されるでしょう。
外国人投資家は通常、3か月の外国為替フォワードを使ってドル建て債券への投資をヘッジします。これは、通貨ペア間の短期金利差に基づいています。
フォワード契約とは、将来の特定の日に、今日合意した価格で資産を売買する契約です。金利差が広がると、通貨変動に対するヘッジコストも上昇します。
おわりに
ヨーロッパの投資家にとって、ユーロ建て社債は通貨リスクをヘッジする必要なく、魅力的な利回りを提供します。アジアの投資家にとっても、これまで十分に投資されてこなかったユーロ建て資産市場の拡大は魅力的です。
ヘッジコストの上昇や米国の政策不確実性が続く中、ユーロ建て社債への再配分は、ポートフォリオの安定性とリターンの向上につながる可能性があると考えています。