特に米国のS&P500種株価指数が長期の株式パフォーマンスの絶対的基準として頻繁に取り上げられていることを踏まえると、これは意外な事実です。
しかし、最近の市場動向は、投資家が欧州株式市場で過小評価されているこのセグメントを再考し、より詳しく検討すべきかもしれないことを示唆しています(図表1)。
図表1:欧州の中小型株のパフォーマンスは群を抜いている(2001~2025年、%)
なぜ今なのでしょうか?
今年のグローバル株式に関する最大のストーリーの1つになっているのは、米国資産から欧州株へのローテーションです。
米国の政治的な不安定さ、政府債務水準の持続可能性、そして米国の企業利益の今後の成長を巡る疑問が米国株および米ドルの見通しを曇らせています。その結果、投資家は分散目的だけでなく投資妙味も求めて欧州にますます目を向けるようになっています。
しかし、資本フローの大半は欧州の大型株に向かっています。特にこの地域の微妙な違いにさほど精通していないと思われる域外の投資家がそうすることは理解できますが、それにより好機を逸しているとも考えられます。
欧州の中小型株をより詳しく検討すべき4つの理由を挙げましょう。
魅力的なバリュエーション
米国株が最高値付近にあることや最近の政治情勢は、現在のバリュエーションが妥当かどうかを投資家が見直すきっかけとなっています。
対照的に、欧州株は大幅に割安なマルチプル(投資尺度)で取引されている企業へのエクスポージャーを提供しています。例えば、MSCI欧州株価指数の12ヵ月先予想株価収益率(PER)は15.8倍であり(S&P500種株価指数は22.8倍)、これは31%のディスカウントを意味します。
しかし、真の投資妙味は、この地域で見落とされている多くの中小型株にあります。MSCI欧州スモール・キャップ・インデックスの予想PERはわずか14.4倍と、S&P500種株価指数に対して37%のディスカウントになっています。
実際、欧州の中小型株の大型株に対する相対的なバリュエーションは、2007~2008年の世界金融危機の最悪期よりも現在は低くなっています。
分散効果
欧州の多様な文化、政治制度、経済状況は、米国株やさらには世界の株式と比較して差別化されたリターンを提供します。
歴史的に見ると、欧州の中小型株は大型株と比べて米国や世界の株式市場との相関が低く、ポートフォリオの分散における強力な手段となっています。
また、欧州に支配的なテクノロジー・セクターがないことはしばしば欠点と見なされてきましたが、今ではそれが強みになっている可能性もあります。割高なテクノロジー株へのエクスポージャーが過大であると感じている投資家は、新たな代替投資先として欧州の小型株が考えられるかもしれません。
域内の成長への追い風
あらゆるニュースが米国の動向に焦点を当てているように感じられますが、ドイツが欧州の成長を押し上げるとみられる大規模な歳出計画を発表したことは留意すべきでしょう。
これは、域内により重点を置き、そこで生み出される成長の恩恵を受けやすい立場にある中小企業にとって特に有益かもしれません。
関税が引き上げられ、世界的に貿易摩擦が激化する世界において、欧州の優良な中小型株は世界的なボラティリティからの一定の逃避先にもなり得るでしょう。
長期的なアウトパフォーマンス
中小企業の株価が長期的にアウトパフォームする傾向を意味する「中小型株効果」は過去の実績に表れています。
例えば、欧州の中小型株は2001年以降、大型株を毎年3.4%ポイント程度アウトパフォームしています(図表2)。
図表2:中小型株のアウトパフォーマンス(2001年以降、年率%ポイント)
注目すべきことに、中小型株のパフォーマンスが最も好調だったのは2003~2007年の期間で、これは欧州株が前回、米国株を大きくアウトパフォームした時期と重なっています。
なぜ欧州中小型株に目を向けるべきか?
すでに欧州株への投資を検討している場合、「市場の正しい部分への投資なのか?」と問いかけるべきです。
欧州の中小型株は、魅力的なバリュエーション、高い分散効果、長期的なアウトパフォーマンスの実績を備えています。
米国資産の見通しに対する不透明感が増してきているように見える現在の不安定な投資環境では、欧州の中小型株は分散投資の賢明な方法を提供していると考えられます。
おわりに
欧州の中小型株は過去20年にわたり、主要な株式市場をひっそりとアウトパフォームしてきました。こうした長期的な実績はしばしば見落とされていますが、投資家が米国資産へのエクスポージャーを見直している今、特に重要な意味を持つでしょう。
最近の米国の政治と経済を巡る不確実性によって、欧州、とりわけ欧州の中小型株の投資先としての魅力が高まっています。これらの中小型株は、魅力的なバリュエーション、高い分散効果、域内の成長トレンドに対する固有の感応度を備えています。
世界情勢が変化する中で投資妙味と底堅さを求める投資家にとって、欧州の中小型株は代替的な投資先になるだけでなく、タイムリーで魅力的な投資機会を提供する可能性があります。
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