なぜ短期投資適格社債なのか
その理由は質の高さに尽きます。低格付けの高利回り債と比較して、投資適格債の発行体は規模が大きく、市場で強い立場にあるほか、債務が少なく、キャッシュフローが安定しており、資金調達がしやすい傾向にあります。このため、こうした発行体はマクロ経済ショックに直面した場合に底堅さをより発揮します。対照的に、ハイイールド債の発行体は通常、より景気に敏感で、債務が多く、セクター固有のリスクにさらされています。その結果、より厳しい経済環境においては、信用が悪化しやすくなる可能性もあります。
それほどフラットではない
米国債のイールドカーブが比較的フラットであることは、特に米連邦準備理事会(FRB)の前回の利上げサイクル開始前の2020~2021年と比べて、短期投資適格社債を支える要因となっています。投資家は現在、イールドカーブの短期ゾーンで魅力的な利回りを見出せるため、短期社債はキャッシュという選択肢に代わる魅力的な投資先になっています。
短期社債のデュレーションの短さは、利上げ環境になった場合の金利リスクが相対的に低いことを意味します。一方、足元のような利下げサイクルでは、短期投資適格社債はキャッシュとは異なり、債券価格の上昇によってキャピタル・ゲインを生み出す可能性があります。
“投資家にとって、短期投資適格社債は低リスクで底堅い利回りと魅力的なインカムを獲得する手段を提供する可能性があります。”
歴史が味方している
短期社債のパフォーマンスは高い一貫性を示しており、ICE・BofAグローバル社債(年限1~3年)指数のトータル・リターンがマイナスを記録したのは過去28年間で1年のみです(図表1)。
図表1:グローバル短期社債指数の年間トータル・リターン(1997~2024年)
この相対的な安定性は主に、投資適格社債の底堅さと短期社債の金利変動に対する感応度の低さによるもので、こうした特性が不安定な局面における、より予測可能な選択肢となります。
どのように投資するか?
アバディーンでは、まずは広い視野で、グローバルなリサーチ拠点と債券の専門知識を活用しています。140人のスペシャリストから成るチームは、全世界で約2,000の発行体をカバーしています。このユニバースから、デュレーションと信用格付けに基づいて、短期債戦略の基準を満たす銘柄を絞り込みます。
多くの短期債戦略は、米国や欧州などの先進国・地域のみに焦点を当てています。私たちの戦略は、特定のベンチマークを追跡していないため、投資対象を先進国・地域に限定しておらず、格付けの高い新興国・地域やアジア各国の優良発行体など、地域を問わず世界全体で投資アイデアを追求しています。こうしたアプローチは潜在的なリターンを高めるだけでなく、ポートフォリオ全体のボラティリティの低減にも寄与すると考えています。
私たちは、公益事業など政府が所有する事業体にも注目しています。また、急成長国の内需型企業も選好しており、こうした企業は地政学的緊張や関税に関連したサプライチェーンの混乱といった外的ショックの影響を受けにくいと言えます。その好例はインドの再生可能エネルギー企業で、このセクターは旺盛な内需と政策支援による追い風が大きな原動力となっています。
利回りをさらに向上させるために、私たちはポートフォリオに以下のような銘柄を選別的に追加しています。
- 格付けの低い(BBB 格の)投資適格銘柄
- 質の高いグローバルなハイイールド銘柄
- (主に先進国・地域の)金融機関の劣後債
- 利回りを大きく向上させる新興国とアジアの銘柄
こうした戦略では機敏さが重要です。私たちは積極的に市場を監視し、必要に応じてアロケーションを調整しています。例えば、特定のセクターが売られ過ぎの場合、関税リスクの影響を受けにくい銘柄を追加する可能性があります。また、バリュエーションが高すぎると思われる場合、リスクを減らし、より望ましいエントリーポイントを待ちます。
結果:ボラティリティが1~2%、平均格付けがAマイナス、デュレーションの上限を2年とするポートフォリオ
おわりに
世界は現在、不安定な状況にあります。投資家にとって、短期投資適格社債は低リスクで底堅い利回りと魅力的なインカムを獲得する手段を提供する可能性があります。積極的で機敏なアプローチを取る投資家は、新興国とアジアの質の高い投資機会を利用することでリターンの向上を目指すことができるでしょう。相対的に格付けが低い投資適格債や短期ハイイールド債への選別的なエクスポージャーは、利回りと分散をさらに高めることができると考えます。
不安定な世界において、今こそ短期社債への投資を検討すべき時かもしれません。