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The Investment Outlook

債券:不透明な市場で短期債がポートフォリオの時価下落耐性を高め得る理由

不透明感が強まる局面で、短期債はポートフォリオの時価の下落抑制に寄与することができるでしょうか。ボラティリティの低さ、ドローダウンの小ささ、インカム主導のリターンは、投資家が短期債に改めて注目すべき理由を明確に示しています。

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市場の不透明感が強い局面では、ポートフォリオの脆弱性が露呈する傾向にあります。

地政学リスクの高まり、不安定なインフレ動向、中央銀行の政策見通しの変化により、ここ数年は債券投資家にとって特に困難な状況が続いています。

債券には一般的に安定性が期待されますが、状況が不安定になると、債券市場のすべてのセグメントが同様の動きをするわけではないことが経験から示されています。こうした市場環境において、短期債は投資対象として改めて検討する価値があります。

短期債はその構造的な特性から、ポートフォリオに安定をもたらすことができ、ボラティリティが高まる局面でドローダウンを限定し、リターンを平準化することに寄与します。

ボラティリティの上昇時にデュレーションが重要な理由

デュレーションは、ほとんどの債券ポートフォリオにおいて引き続き主要なリスク要因となっています。債券は残存期間が長いほど、利回りの変化に対する価格の感応度が高くなります。インフレ予想が急激に変化すると、このような感応度が資産価値の大きな変動をもたらす可能性があります。

残存期間が通常1~3年の短期債は、市場予想が変化した場合でも価格感応度が低くなります。こうした債券は、残存期間が短いため、イールドカーブの急激な動きによる影響をそれほど受けません。実務上、これは利回り上昇時の価格変動が小さくなること、また市場のリプライシングが急速に進む際にドローダウンが限定的になることを意味します。

こうした違いは直近のストレス局面において特に顕著になっており、イールドカーブの長期ゾーンで急速かつ無秩序な調整が進んでいる一方、残存期間の短い債券はより安定しています。

長期的なボラティリティの低さ

過去のデータはこの点を裏付けています。バンク・オブ・アメリカによれば、過去20年間で残存期間1~3年の社債の暦年ベースのリターンがマイナスとなったのは、わずか1年にとどまっています。

これに対し、より広範なグローバル全残存期間社債インデックスは、市場のストレス局面における大きなドローダウンを含め、数年がマイナスのリターンとなりました(図表1)。

図表1:短期債はドローダウンが限定的

この違いはボラティリティの数値にも明確に現れています。同期間において、

  • 残存期間1~3年インデックスの年率リターンは約3.3%、ボラティリティは約1.8%でした。
  • 全残存期間インデックスの年率リターンは約4.1%でしたが、ボラティリティは約5.1%と大幅に高くなりました。

リスクの観点から見れば、短期債のリスク単位あたりのリターンは相対的にかなり高くなっています。元本の保全とリターンの安定性を優先する投資家にとって、このトレードオフは重要です。

直近のショック局面における短期債の動向

直近の市場イベントは、こうしたダイナミクスを具体的に示しています。

  • 2025年4月の関税ショック:昨年4月、米国の関税発表がインフレ要因と解釈されました。投資家が物価上昇圧力や中央銀行の政策見通しを再評価したことで、イールドカーブが上方にシフトしました。

    同月のグローバル全残存期間社債インデックスのピークからボトムまでのドローダウンは1.9%近くに達しました。対照的に、残存期間1~3年インデックスは下落幅が0.4%未満となり、より迅速に回復し、数週間以内に高値を更新しました。

    残存期間の短さは、急激なリプライシングの影響を和らげ、下落を限定するとともに、迅速な回復を支えました。
  • 2026年のイラン紛争:今年に入り、イラン紛争が激化した際にも同様のパターンが見られました。原油価格の上昇がインフレ懸念を強め、イールドカーブを押し上げました。

    3月2日から4月14日までの期間には、再び長期債に影響が集中しました。全残存期間インデックスの最大ドローダウンは2.3%近くに達しましたが、同期間における残存期間1~3年インデックスの下落は0.8%程度でした。

    短期債も影響を完全に免れたわけではありませんでしたが、下落の規模は大幅に小さく、ボラティリティの上昇もさほど長期化しませんでした。

インカムが主要な役割を果たす

短期債が異なる動きをする傾向がある理由の一つは、そのリターンがどのように生み出されるかにあります。短期債は残存期間が短いため、トータルリターンに占めるインカムの割合が、債券価格の変動によるリターンよりも大きくなります。

利回りの上昇時には、こうしたインカムが重要なクッションとなります。これについて考える上で有用な指標は損益分岐利回りです。この指標は、価格下落による損失が債券ポートフォリオの年間インカムを相殺するまでに、利回りがどの程度まで上昇できるかを示します(図表2)。

図表2:短期債の損益分岐利回り

短期債は、相対的に魅力的な利回りと低いデュレーションを併せ持っているため、年間のリターンがマイナスになるには、通常、利回りが大幅に上昇する必要があります。

実務上、こうした特性は、金利のボラティリティに対する感応度を低下させ、市場環境が不安定なときでもパフォーマンスを安定させます。

残存期間の短さと信用リスクの抑制

残存期間の短さは、長期的な信用面の不確実性へのエクスポージャーも低減させます。信用リスクが完全になくなることはありませんが、満期までの期間が短い債券は、借り換えリスク、バランスシートの悪化、ビジネスモデルの構造的な変化といったリスクへのエクスポージャーを限定します。

短期債市場の投資適格発行体は、投資家が短期的なキャッシュフローによる債務返済能力を予測しやすい傾向にあります。そのため、このセグメントは、長期的な信用サイクルに伴うリスクを負わずに社債のインカムを求める投資家にとって特に魅力的です。

債券を満期まで保有できる柔軟性を備えたアクティブ運用戦略では、「プル・トゥ・パー」効果によってこうした特性がさらに強まります。債券は満期が近づくにつれて、価格が自然に額面に収束します。これは、時価評価に基づく評価額の変動を抑制し、投資機会が訪れた際に再投資に振り向けられる定期的なキャッシュフローを提供します。

ポートフォリオの設計を通じた価格下落耐性

昨今の投資環境における不確実性は、もはや一時的なものではなく、構造的なものとなっています。地政学的ショック、インフレのサプライズ、突然の政策転換は、例外ではなく常態となる可能性が高いと言えます。

そうした状況において、ポートフォリオの時価の下落抑制には、正確な予測を立てることよりも、幅広いシナリオに対応できるポートフォリオを構築することにあります。

短期債は、デュレーション・リスクの低さ、インカム主導のリターン、早期の元本回収、信用面の不確実性への限定的なエクスポージャーといった明確な構造的特性を通じて、こうした価格下落耐性に寄与します。

底堅い利回りを維持しながらポートフォリオを安定化したい投資家にとって、短期債は債券配分の中で重要な役割を果たすことができるでしょう。

本内容は、原則として機関投資家のお客様への情報提供を目的として作成・公開しています。

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